A.基本的な考え方、姿勢
建築は普通、一般的には建築主にとって一生に一度あるかないかの高い買い物です。家電製品や車などを買う場合は、既に完成品(商品)がいくつも用意してあり、実物を見たり触ったりカタログでスペックをチェックしたりし、金額と照らし合わせて商品を選ぶことができますが、建築の場合は買う(契約する)時点では実物は無く設計図面があるだけ。どんなもの(建物)ができるのかある程度は分かっているが、実際“かたち”にならないと分からない部分も多い。しかし、実際の“かたち”になってから自分の思っていたものと違うと気付いても、既に“かたち”になってしまったものをやり替えるには多大の費用が発生するし日数もかかる。また、できあがった建物がちゃんとした“商品”になっているのかどうか(構造的な部分や様々な仕様に関して)判断ができない。といったところが、建築に関して“素人”である建築主の方たちの悩みであろうと思います。これは設計についても施工についてもいえることでしょう。
当社で、業務上最も気を遣っているのは“どんな材料か、どんな機器か、どんな仕組みか、どんな形か、どんなものが出来るのか、事前に少しでも多く建築主に分かって頂きながら業務を進める”という点です。そのためたくさんの資料を提示し、たくさんの説明をします。結果、建築主の方にも多くの時間を割いて頂くことになりますが、実際にはそれほど時間がとれない建築主の方もおられますので、必ず当初の段階で“進め方”について話し合います。
もう一点、非常に気を遣っているのは当事者である建築主、設計監理者、施工者の3者の間に良好な関係を構築することです。3者それぞれに大事な立場にあり、3者の協力・共同作業の結果、最終的に良い“もの”が出来上がります。その大前提が3者の良好な関係と考えていますし、更に言うならば“もの”が出来上がったらそれで終わりではなく、その後の建物のケア等に関しても“3者の良好な関係”の元に適切な処置がなされるはずです。建築士の立場で言うのは変ですが、どんなにしっかりと設計し、施工されても、竣工後やはり何か出てきます。水の出が悪いとか、空調機の音が異常に大きいとか、建具の開閉がスムーズでないとか…。
独立開業以来、これまでにたくさんの仕事をさせて頂きましたが、建築主の方と悪い関係で終わったことは殆どありません。どなたとも、いつまでも良いお付き合いをさせて頂いています。これは自慢でもあり、誇りに思っています。
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